横浜市議会議員 おぎわら隆宏

 

市政報告/議事録

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令和3年 大都市行財政制度特別委員会

△特別自治市制度実現に向けた展望について

○横山[勇]委員長
 議題に入ります。
 特別自治市制度実現に向けた展望についてを議題に供します。
 本日は参考人として、一橋大学大学院教授、辻琢也氏に御出席いただいております。
 この際、私から一言、御挨拶を申し上げます。
 辻先生、本日は大変お忙しい中、ありがとうございます。
 本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表して御礼申し上げます。
 辻先生は、一橋大学大学院教授であらせられまして、内閣府の税制調査会委員、総務省の国地方係争処理委員会委員、指定都市市長会「多様な大都市制度実現プロジェクト」アドバイザーを務められるなど、大変御活躍されております。
 あわせまして、本市の第2次及び第3次大都市自治研究会においては座長を務められ、本市における施策立案に御尽力いただいております。
 本日は辻先生から、特別自治市制度実現に向けた展望についてお話を伺えるとのことですので、本日の御講演を参考に、今後、本委員会においてより議論を深めてまいりたいと考えております。
 短い時間ではございますが、先生の貴重な御意見を拝聴し、しっかりと勉強させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、辻先生、御講演をよろしくお願いいたします。

◎辻参考人
 辻でございます。よろしくお願いします。それでは、マスクを取って説明いたします。
 昨年も一度お話しさせていただき、今回もそれからの進捗部分も含めて資料作成してきました。ちょっと多めになっていますので、少し早めに説明いたします。
 皆さん委員会所属ですのでちょっと早めに説明しますが、分かりづらいところ等ありましたら、質疑のときにじっくり御質問ください。ちょっと無理なスピードでしゃべるところがあるかもしれません。
 それでは、まず今日の話の中身なのですが、特別自治市における今後の道程と選択ということを中心にお話ししたいと思います。
 ただ、一番原点で重要なのは、今抱えている政策課題と、この特別自治市問題がどう絡んでいるかというところが原点にして、また最大に重要なところですので、今いろいろアンケート調査等やりますと、一番関心が高いのはやっぱり新型コロナウイルス感染症対策、それからその次がずっとお金もかけてきました少子化対策、それからその次が地球環境対策、まちづくり関係の対策、それから国際化に向けたまちづくり、それからDX時代の行政組織がどうなるかと。特に最近、税務に関して非常に事態が進捗しています。
 それから、これを踏まえまして、今後の超高齢社会によってどうして持続的な都市経営ができるかということを特別自治市の観点から御説明して、最後に今後の道程と選択ということで御説明したいと考えております。
 それでは、最初にまず今日の基本コンセプトなのですが、特別自治市、皆さんに申し上げるのは釈迦に説法ですが、まさに市域内において県の機能を指定都市が併せ持つという制度をつくっていくことになります。ですから、今日もこれからこれが市民生活にどうやって関わっていくかということをお話ししますが、実はこれ、県と市の役割をどうするかという話なので、行政内部の改革なのですね。ですから、言わば行政の流通革命という感じの位置づけになります。それから、かつての特別市の制度があった時代がアナログ時代で、残念ながら実現する前に削除されてしまったのですが、DX時代といいますか、事実上、大分デジタル化も進んできていまして、県も大分存在感が変わってきています。このことも踏まえて今回の提案があります。
 ですから、今回の特別自治市の提案というのは、今のはやり言葉で言うとプラットフォーム改革なのですね。携帯電話が3Gから4Gにするというような改革を言うことになります。こうすることによってアプリの使い勝手はよくなるのですが、アプリが根本的に変わるわけではないのですよ。つまり改善していくだけなので、アプリを直接変える改革ではないと。あくまでもプラットフォーム改革だと。ここがこの改革の難しさというか、説明するときにちょっと厄介かなと思うところで、アプリが変わらないなら取りあえずプラットフォーム改革は後回しにすればいいのではないのか、もっと忙しいことたくさんあると後回しにしていくと、今もう限界になってきているというのが、今日の話になります。
 何でこれをやるかというと、第一には二重行政の廃止、無駄をなくすと。これが今までは二重であっても、それこそ市役所も皆さんも努力して、なるべくそれが弊害と固定しないように頑張ってきたのですけれども、デフォルトでこれがあるので、やっぱりそこの部分の無駄がどうしても残ると。この無駄、結局大半の業務を既に指定都市は行っていて、自治体として必要な業務をここに一元化すると。県から独立することによって、必要としていた調整業務ですとか、事務手続ですとか、こういうのを大幅に減らして、時間、職員、組織、予算、この無駄を削減するというのが、この狙いの一番です。
 2番目は、この無駄をなくすことによって改善を促進すると。つまり遅い遅いと言われていたお役所仕事を克服していくということで、特に県がなくなることによって、住民から見ると自治体における受益と負担の見える化が進んでいくのですね。住民と現場で接する基礎自治体が国等の行政機関に直接対峙できる機会が増えて、住民ニーズを他の自治体、自分たちの自治体、それから国等の政策に迅速に反映しやすくなると、この効果がやっぱり非常に大きいと思います。
 ただ、3つ目、これが今非常に大きいことで、どんなにいい改革も、高齢化が進んできていますので、制度を抜本的に新しくして何でも一新するというのに非常にコストがかかって、生活も変わるので受けないのですね。やっぱりいいことはするにしても、制度変更は最小にするということが必要で、実はこの特別自治市って、さっきのスマホの話で言いますけれども、まさに局内工事で終わるような感じで、住民生活にはあまり直接変化が及ばないのですよ。したがって、今のよき横浜の自治をつないで、そのままこの改革はできると、ここのところがもう一つ大きなポイントになります。ですから、日常生活に係る変更点は最小限度、ただ、都道府県政を変えていくということですから、地方自治制度上は大きな改革ですけれども、今の人口予測でいくと、区域とか市域の変更は伴わないと。
 では、本当に大きな改革やらないで済むのということなのですが、実はもう既に一番大きい改革はやったのです。それはここに書いてある県費負担教職員の権限移譲ということで、近年すごい数、1万5000人を超える県職員が既に市に移管済みになっているのですよ。これが多分最大の難関でした。これはもう既に終えているということで、今までの分権改革の延長線上でこの改革ができると、この3つが今回改めて強調したいポイントになります。
 では、もうちょっとこれを個々の具体的な施策の中に見ていこうということになりまして、私も3年前、2年前、こんなことになると思いませんでしたけれども、新型コロナウイルス感染症対応、こんなに大変な状況になっています。これも皆さん日々努力されて大変で、特にワクチン接種のスピード、これが毎日のように報道されていろいろ言われています。これは単純に自治体との大きさとかは議論できないで、今のところだとやっぱり東京圏とか沖縄、関西圏で人口当たりの感染症数が多くなっている傾向がありまして、特にワクチン接種に関しては、感染者数の少ない地方、ここで逆に接種率が高くなっているという状況になっています。
 ただ、これ本当に皆さん努力していますので、単純に人口比になっているわけではありません。ただ、どちらかというとこういう傾向になっているということなのです。これが都道府県別にグラフに落としたものになっていまして、ちょうど神奈川県がここの赤く示しているようなところの部分になります。これは県内市町村で見ても結構努力していまして、横浜市も断トツにでかい市ですが、頑張ってここに位置しています。ですが、どちらかというと、やっぱり人口の非常に少ないところが比較的患者もいないけれども接種率も高い傾向になっていて、これが普通かどうかと、何と比較するか分からないのですけれども、それこそ例えば4Gから5Gで、どこから先に進んでいるかを見ると、普通は市場効率のいい、費用対効果のいい大都市から中心に進んでいくのに対して、ワクチン接種は明らかにそうなっていないのですよね。
 何でこの配り方になっているかということなのですが、本来はやっぱり人口当たりの感染者数の多いところから接種率を高めていくというのが効果的なのですよ。しかし、実際のところは感染者比率の少ない人口規模の小さい団体からワクチン接種が高くなるという傾向があって、これがどうしてそうなっているかというと、デフォルトで都道府県配分になっている。つまり人口60万人の横浜で言ったら大きい区役所2つぐらいのところで、基礎自治体でもない県が一方業務をやっている中で、結局人口900万人を超える神奈川県の中で三百七、八十万人の横浜市がさらに県の調整を受けなければ駄目だという仕組みの中で配分をしている。そのことに伴って、その調整、是正に貴重な時間が使われているという形になっています。
 これは何でそうなるかというと、やっぱり基本的な業務をやっているのは基礎自治体で、そこが接種の場所ですとか、医師とか看護師を確保した上でワクチンの接種計画を提出して、実質的に機能している上で、さらに県が市町村配分を調整枠を割って保持するのですが、この調整が結局市町村からの積み上げ資料に基づいてやらないとできないので、そのためにこの調整が必ずしも有効に機能しないと。全国的な配分はデフォルトで、大都市特例なしに都道府県配分でやっているという形なのですね。
 今、やっぱりそれは非合理だということで、大都市特例で大都市に関しては都道府県と同じという方法もやるのですけれども、結局デフォルトで都道府県配分ということをされてしまうと、これを是正するのに時間がかかってしまう。どう考えても小さい県の部分をどうするかというのはありますけれども、大き過ぎる道府県の部分については、指定都市分については独立させるべき、配分させるべきというのが普通の考えなのですけれども、やっぱりこの制度をつくるまでにまた少し時間がかかってしまうのが今の課題になっています。これが都道府県にあって、その都道府県の中に人口規模の差が非常に大きくなっていることに伴う弊害で、これに基づいて行政資源を配分するとこういうデメリットが生じてしまうことになります。
 さらに、ワクチンの問題だけではなくて交付金の問題がありまして、県のところでデフォルトで配る交付金がある。その一方で市にも臨時交付金という形になっていて、本来は一番住民と密接な基礎自治体がこれらの交付金を一括して総合的に実態に合わせて交付すれば一番効果的なところ、これができないでいる。県は県になって、市は市になっているというところが結局一番の大きなロスで、これでもいろいろ調整しますので、なるべくこれでも弊害が出ないようにやりますが、ここに改善すべき大きなロスがあって、これが長く続くと多分是正されるのですけれども、当分の間これが続くのが課題になってしまうということになります。
 これがワクチンの間に見られる問題で、結局これは都道府県の大きさと指定都市、特に指定都市で最低でも70万人で、横浜は400万人弱まできているわけですから、400万人というと、県でいうとかなりの上位です。10番ぐらいに入る大きな県に相当して、そこのところが県並みに扱ってもらわないことに対するデメリットが生じていることになります。これは今でもそうですが、今後、2045年になると、一段とそういう傾向が続いていくことになります。
 これが感染症の問題だとしますと、これまで一番時間とお金をかけてきたのは、やっぱり少子化対策なのです。これを何とかしていきたいと。ただ、こうした中で今でも子育て関係は相当部分指定都市がやっているわけなのですが、そうした中で例えば何が残っているかというと、この県の補助金、これについてなぜか指定都市、中核市の補助率が低いと。最初は同じぐらいで始めるのですけれども、途中から低くなってくる。それから、中には最初からないものがあって、小児医療費の助成ですとか、ひとり親家庭等の医療費助成事業、それから後で出ます在日外国人の高齢者、障害者等の福祉給付金事業というところが、なぜか指定都市分だけ、中核市分だけ対象外になったり、補助率が低くなっている。
 しかし、よく考えてみると、神奈川県内は比較的財政力に恵まれているところがあって、横浜市や指定都市の財政力指数が県内で決して高いとは言える状況にないにもかかわらず、こうなってしまうのです。指定都市は大きくて余裕があるからと言われるのかもしれませんけれども、これら対象になる県民が一番多いのはやっぱり横浜市、次に川崎市、これは間違いないのです。そういう中で、果たしてこれは許されるのかと、これは不公正といったら不公正なのですよね。
 こういうところが一方で問題になっていて、財政力指数で見ると、もともと県の中で神奈川県は相当高いほうですし、その神奈川県横浜市、それから川崎市が今でも一番高いには高いですが、そんなに変わらない水準になっている。この次が県のレベルで見た指定市を除いた市町村平均と指定都市と比較したものになりますが、これで見ても著しく財政力が高いわけでもないけれども、なぜか低くなっている。これは大都市の常識なのかもしれませんが、考えてみるとおかしな話なのですよね。
 こうした中で今、子育て関係ですと、ほとんど基礎自治体のほうに移譲されていて、少し前は県のところに幼保連携のところなんかも含めてあったのですが、今は幼稚園部分だけが残るだけになっています。ただ、この幼稚園部分に関して残っていますので、保育園と同じように幼稚園のこと、例えばコロナウイルスの感染症対策ですとか、苦情対応ですとかを同じように市に言っても、市としては県を通じて実施してもらうしかないシステムになっていて、やっぱり合理性がないのですよね。
 やっぱりここのところはこの幼稚園とか保育園の調整よりも、総合的な子育て支援策を推進していくことに力点を置いていくべきで、本来はこういうところの調整よりも、特殊出生率を横浜市全体でどうやって理想出生率、希望出生率まで高めていくかという対策のほうに総合的に力点を置きたいところ、幼保関係の調整その他に時間がかかってしまう形になります。これも前から言われていることですが、まず解決していかなければならない課題になります。
 子ども関係は意外に縦割りがあって、県との役割が非常にあって、これはもうなかなか直らないのだと思っていたのですが、実はこれ先ほど言及しましたように、一番のゆがみは県費負担教職員問題でした。結局人事権まで指定都市にあるのだけれども、給与負担だけは県が負担するという形でずっと固定であったものを近年、これを給与負担も含めて指定都市のほうに移譲するという形が行われました。これが先ほど言った近年行われた一番の大きな改革になります。これによって、結局給与負担が非常に大きいですので、職員の面倒を見ていくリスク負担も来ましたけれども、これを通じて総合的にマネージしていくのも今、横浜市の仕事になっていて、子育て関係について行政資源も含めて一体的にその業務をやっていく体制が整ってきているということになります。
 このときの事務移譲による職員数の推移を示したのがこのグラフになっていまして、やっぱりかなり大きな変化が生じているのが分かります。そういう意味では、大きな一歩はもう既に実施済みということになります。これをやったことによって、単につけ換えただけなのかという話で、その効果はどうかを検証していかなければならないのですが、まずトラブルは基本的にありませんでした。そうした中で、どちらかというと職員配置についてはやっぱりより手厚くなる方向に推移しています。
 それから、もっとむしろ長期的教育の効果は、やっぱり短期ではかれませんので、長期で見ていくことになりますが、どんなに頑張っても子どもが減っていきます。減っていった中で、その財源をいかに子どもに総合的にうまく使っていけるかを考えたときに、やっぱり保育も持って、本来はここに幼稚園もあって、小学前児童の教育なども含めて総合的に考えることに使える体制に持っていったほうがいいのは多分間違いないことなのです。これをさらに進めていくことが望ましい方向で、その方向に大分進んできていると。もう一歩やらなければ駄目だというのが、今のこの状況だと思います。
 このときの財政フレーム、結局委譲した分お金がないとやっていけないので、何をしたかというと、個人住民税の所得割2%を財政移譲するという形になって、近年で見るとまとまった大きな地方税の移譲と業務の移管を行って今日に至っている。これは財政的に見て、短期で見て損だったか、得だったかと、一番関心のあるところかもしれませんが、これだけ大きい改革になると、単純に損か得か言えない水準できっかり調整していると言えて、長期的にどうなるかはもうちょっと趨勢を見てからしか言えないのかもしれません。これが今のこの状況になります。
 では、これに対してまちづくり関係を考えたらどうなるかということですが、お隣の川崎市のほうがちょっと厳しかったかもしれません。全般的に見ると、本当に1960年代ぐらいまでは結構災害があったのです。それがこの10年ぐらい前まではほとんど自然災害が減っていたのです。ところが、東日本大震災ぐらいを一つの契機に、近年全国で日常的に自然災害が発生していると言わざるを得ないぐらい頻発するようになりました。これに対してどうやって対処するかということがポイントになります。
 これに対しては、市としてできることはソフトの対応、それからハードの対応ということになりまして、市内のインフラについては相当部分、もう既に市が持っていて、そこに国の部分、それから一部県の部分がやっぱりあって、これが特に一級河川の部分は国、特に二級河川の部分は都道府県が持っていて、ここに示されている川が一応県管理で残っているということになります。とはいえ、県がでは万全に全部管理しているかというと、事実上はかなり横浜市がやっていて、各種事業をやるときは、やっぱり県にお願いして結局横浜がやるというような形になっている。これも常識的に見ると、ではだったら日頃からもう横浜でやっていいのではないかと、県は県の事務所で結構な職員も配置されたりしますので、その部分も含めて一体的に効果的にやったらどうかとは言うのですが、なかなかそれがかなり時間をかけないと進まないという状況になっていることになります。
 先ほどの教育委員会事情もそうなのですが、この災害関係を見ても、大体要望してから力を入れて順調に進んだと言われて、大体5年はかかっているのですよ。ただ、それはよほど大きいところでかなり力点を置いてやらないとなかなか進まない。そこのところが果たしてそこまで意図的にいちいちやらないと駄目なのか、デフォルトでもっといい改善案をやって、いいところから発車すべきではないかというのが、この主張になります。
 これを考える上において、災害救助法というのがあります。この災害救助法も基本的にはデフォルトで都道府県が行う形になっているのですが、その中で、ただそれではうまくいかないのもあるので、救助実施時の指定というのができることになっていて、指定都市の中から、言わばさっきの大都市特例のような形なのですが、そこを指定して、指定都市に関しては直接指定都市ができるようになるという制度を今はつくりました。これもただ、つくったはよかったのだけれども、つくるまで相当時間がかかってここまで来ていて、ちょうど今のコロナの対応と似たような感じになっているのですね。
 結局、道府県は総合調整機能だとか、資源の配分機能が損なわれることへの懸念があって、しかし実際上は県で調整できる範囲は非常に少ないので、時間を考えたときに、やっぱり覚書等を締結して、県や自治会の懸念を払拭した上で指定都市が行うという形をつくらないとできないことになっている。これが多分あらゆる分野でこういうところがデフォルトで始まっていると。それをどうやって改善していくかを考えなければいけないのです。
 例えばこれは県内で言いますと、山北町で、隣の御殿場市にもともと陸上自衛隊がいたということがあるのですが、山北町が自衛隊に給水車を要請したところ、自衛隊もすぐオーケーなのだけれども、結局県を通していないということで断られて、県の給水車がかなり遅れて到着するという案件があって、こういうことが日常的に起きていく可能性があることをどうやって是正していくかを考えていかなければならない。これが起こらないような体制をあらかじめつくっておくことが必要ではないかということになります。
 それから4つ目、これが今後、国際化に向けてどういったまちづくりをするかという課題になります。これ、皆さん実感を持つと思いますが、ここのところ外国人の方々が加速度的に増えてきている形になってきて、いろいろまちおこしや村おこしをやっても、増えるのはやっぱり外国人。結局日本人は減ってきていますので、若い人は外国からの人が多いという形もあって、こういう状況になっています。
 国籍的に見ると、今はやっぱり中国です。日本の10倍を超える人口がいて、ここが一番多くなっていまして、横浜を中心に見た転出入の状況を直近で示したものがこれになります。直近で見ると、結構横浜市は健闘していまして、東京都区部に対してもプラスなのです。それから川崎に対してもプラスになっていて、ただ、もっと多いのは国外なのです。つまり日本国内のどこかから集めるというよりも、世界から人を集めることで今の横浜が成り立っているのです。ですから、そういう意味では、対外的に魅力のあるまちをつくり続けるというのが人口動態的に見ると非常に大きい要素になっているのが、ここから見て取れるところになります。
 では、これが結局どういう負担があるかというと、いろんな複雑な問題があって単純に言えないのですが、やっぱり外国籍及び外国につながる児童数が増えていて、この人たちの教育問題というのがどんどん深刻になってきて、お金もかかるのです。国の制度も遅ればせながらできていますけれども、やっぱり市単独で結構考えなければならないところも多い。ここのところの居住環境をどうやって工夫することができるかどうかと。
 この表の姿で、やっぱりいろんなベンチャー企業が進出、関内地区にも国内、それから国外のいろんな企業が立地するという状況になっていて、これらをトータルにうまくやっていけるかどうかという話なのです。そういう意味で、先ほど言った県費負担教職員の移譲で人件費も含めて一括で横浜市が業務をできるようになったというのが非常に大きいことなのですが、これをさらに国際的な魅力あるまちづくりに生かしていくことをさらにプラスで考えていかなければならないというのが今の状況になります。
 昔まちづくりのところに関しては、これは実績ベースの話ですと、都市計画の最終決定といいますか、そこは都道府県が持っている時代が長く続きました。形式的に最後、承認するだけだからと言われることもありましたけれども、やっぱり最後の手続をやるかどうかというのは結構重石になっていて、そうした中で都市計画決定の改正によって、今から10年弱前に、いわゆる線引き、それから都市計画区域の整備、開発及び保全の方針のマスタープランの決定というのが制度的にも横浜市に移譲されるようになりました。
 ですから、この移譲効果がどうなっていたかを見ると、横浜市が独立してやることの意義というのが見えてくる形になるのですが、そこの青のところで示していますとおり、規制誘導地区の設定をしたり、それから特に団地再生を積極的に進めていくことで、線引きについても合計197地区の市街化区域の面積を約624ヘクタール増やす形の改革を地道に進めてきたことになります。
 この経緯を書いている主に線引きのところで言いますと、逆線引きしたところは0.1ヘクタールと限られているのですが、もともと初期に線引きしたときにかなり調整区域がいびつに残っているようなところもあって、そこのところがなかなかできないでいたのですが、それを自分たちの中でしっかり変更してやっていくことがここで可能になった。それを実現して、これを地図上に落としたのが44ページになりますが、市域のところにかなりにわたって行われていまして、やっぱり自分たちのところで自己決定の下でまちづくりをしていくという体制で、自分たちのまちづくり、それから特に国際もにらんだまちづくりをしていくのが、今後の発展にとっても不退転で重要なことのように思います。
 それから、ではそうした中で行政組織が今後どう変わっていくのかを展望したいということで、今全国で見たときに、やっぱり一番行政組織が変わってきているというのが税務事務。これがシステム化も含めて進んできていますし、皆さん、確定申告御自分でされると、結局電子申告が随分可能になってきていまして、昔に比べると2月中に一番の繁盛するのが各確定申告会場で、そこで市役所の人が比較的丁寧にいろいろ支援してくれるというのが、言わば税務署との違った売りの一つになっていた自治体もあるかもしれません。そういうようなところが今どんどん電子化してきて、そっちのほうが便利になってきていると。それに合わせて、では組織をどうやって変えていくべきか、そこを検討しなければならなくなっています。
 では、税金を集めるということを考えたときに、今日は特別自治市の話なので、県の組織については基本的に勉強しないのですが、この部分だけはちょっと参考になるので県を言うと、県の収入、歳入決算と大体46ページの下に書いているグラフなのです。3つ源泉があって、地方消費税と個人県民税と法人事業税プラス自動車税なのですが、実はこの個人県民税というのは、ここに書いてありますとおり、国に申告情報があって、それを市が課税・徴収して、それを県が受領するというシステムになっています。だから単純に言うと市が集めているのです。
 一方、地方消費税はどうなっているかというと、国が徴収して県に渡す形になっています。それをさらに市にも交付する、県交付になっている。となると、実は個人県民税と地方消費税というのは実質県が集めていないのです。通っているだけなのですよ。自分で集めている色彩が強いのが残る法人事業税と自動車税なのですが、自動車税については今地方税の共同機構というところで共通に徴収して申告できるようにしていくことが可能なシステムを整えていくことになってきていますので、多分ここだけ県が集めていくことは、必ずしも合理的ではなくなってくる。
 残る法人事業税なのですが、これについては譲与税化してきていまして、人口割で配っているというところが非常に強くなってきていますので、事実上、歳入部分については機械的に配分したり、裁量とは関係なしでやっていくものの比重が強くなってきている。これが今の歳入の状況になります。
 これをさらにデジタルが進んできたときにどうなるかという世界なのですが、今いわゆるガバメントクラウドというのを整備していまして、17業務、国が整備するガバメントクラウドでアプリケーションを構築するということになっています。この17業務、住民基本台帳、生活保護、市税など、これらの基幹システムなのですが、大体全部市の業務であって、県の業務は含まれていないのです。マイナンバーで接続するようなものについては、基本的に市の中で情報管理を厳格にして業務をやっていく形になっていて、県を介さず市と国によって調整していく形になっています。デジタルの世界の中では今の実態も非常に近いのですが、結局市と国が対峙するといいますか、直接つながって業務をしていくシステムになっていることになります。
 これに合わせて、市の業務も結局どうなってきているかというと、昔は区役所ごとにそれこそミニ市役所のように全てを整えていくのが、何となく進んだ区のイメージで考えられていた時代もあったのです。しかし、今のシステム化を考えてみたときに、いわゆる市の対市民窓口ではなくて、市の内部事務を処理するようなものも全て区役所に同じようにあることが効率的なのかという話になってきて、区ごとに地域支援の体制につきましては充実させていくという方向が示されて、その中で業務をやり、それから区の固有の地域問題を解決するために区関係の予算は充実させて、区づくり推進を行っていくと、これは全国の指定都市にも先駆けて横浜市が実践されてきたルールになります。
 しかし、その一方で、例えば昔は区の税務課で特別徴収、事業所税の徴収、法人市民税の徴収というのも全部やっていたのですが、市1か所で合理的にやれるものはやれるということで、法人課税は財政局にまとめ、償却資産課をつくり納税管理課をつくる形にして、システムで合理化できるものはまとめて、アナログで大切にしなければならないことは各区に充実させる方向で進んできている。これがまさに指定都市といいますか、将来的には特別自治市になる市の全体性と区のミクロのアナログのよさを残したまちづくりとして見えてくるところではないかと思います。
 したがって、一言で言うと地域協働の総合支援拠点、こういう形で区役所の機能強化を進めてきたことになりますが、ただこれは地域でそれぞれですので、その進め方には地域の差がよい意味でも表れているように思います。こういう体制をつくってきました。
 こうした中で、大阪都構想のときもそうなのですが、結構市民、区民の皆さんから見ると、今の区をやっぱり残せるのか、残せないのかというのは、特に区の自治関係をやってこられた方とか、結構深刻なというか、深い意味があります。そうした中で2040年ぐらいまでの横浜市の各区の人口を見ますと、前より人口集中が進まないこともあり、大体30万人ぐらいから10万人弱ぐらいまでの範囲に収まっています。基本的には今のこの区を維持することによって総合的な区政を進めていくことができるのではないかということになっているのがこの状況です。したがって、今ちょうど定着、なじんできた、この区の大きさ、まちづくり、これを継続的に伸ばしていくというのがこのまちづくりの発想の原点になります。
 したがって、今後、地域協働の総合支援の拠点としての区役所のイメージと、そこにおけるアナログの窓口業務、それからそこを中心とした地域の様々な活動のプラットフォーム、こういうものの中でまちづくりをつくっていく、これを進めていくのが今後の横浜市の姿であり、特別自治市の姿になります。
 こういうところも含めて、では最後に今後の都市経営を展望していこうというのが、この次の部分になります。
 今改めて特別自治市の話を持ってくる1つの理由としては、56ページが1985年から今日までの市税の歳入状況と歳出、決算、この状況にデフレ等を考慮せずに落としたものになります。だからちょっと時間がありますので、そこのところは見なければ駄目なのですが、見たら分かるとおり、昔は比較的乖離がなかった歳入歳出が、近年、歳入は伸び悩む中で、歳出は着実に伸びてきているのがここから分かります。やっぱり昔に比べたら大変になってきているのです。
 何で大変になってきているかを分析すると、収入のほうで見ると大都市は人口も多いのですが、固定資産が多いです。これが結構潤沢にあったのです。これが近年の動向を見ると、市民税は税源移譲なんかもありましたので着実に増え、しかも子育て環境対策があって、主婦の皆さんにも働く方が増えているので、そういう意味で市民税は増えてきているのですけれども、固定資産税はかつてほど伸びてきていない状況があります。これが歳入の側で見た大きな課題です。歳出のほうを見ると何が増えているかというと、大きいのが扶助費、それから公債費、扶助費が増えてきていて、どうしても高齢化も進んでくる中で、いろんな子育て施策も充実させていく中で、やっぱりずっと恒常的に措置していかなければならない費用が増えてきていることになります。
 この状況を踏まえて、先ほどの歳入と歳出を1985年に1にして、その伸び率を比較したグラフが59ページになります。これを見ると、バブル前の1980年代後半ぐらいまではやっぱりいい時代で、歳入と歳出がほぼイコールで増えている。ですから、横浜市としては、そんな国のほうの顔色を気にせず、自分たちのまちづくりをがんがんやってこられたいい時代があったのです。これがこの後、それでも他市に比べたら歳入まあまあ落ち込まないほうだったのですが、少なくとも伸び悩んでいるのですよ。
 一方、歳出のほうは一定ペースで着実に増えていて、途中随分行革で頑張ったのですけれども、やっぱり子育て対策だとか、それから生活保護費ですとか、どうしても増やさなければならないものは増やさなければならないということもあり、着実に増えてきている。したがって、前よりも今までも努力してきたのですが、これからもますます費用対効果には敏感に業務をしていかざるを得ない。前までは、まあ大都市の力量でこのぐらいは負担してもいいかと思っていたものについても、やっぱり市民のことを考えるとうるさいことも言っていかざるを得ない状況になってきているのだと思います。
 これだけ伸び悩んできているのですが、少なくとも今までは人口が減ってきていないのです。これは東京都区部もそうなのですが、今の出生率ですから、必ず人口は減ります。今後はこれにさらに人口減少が入ってきて、高齢化率はほかよりは低いとしても、母体の市民数が多いですから、高齢者の絶対数の増加ペースは高いのです。これに耐えていく行政業務をしていかなければならないことになります。
 それから61ページ、これも皆さんもう何度も見たグラフかもしれませんが、昭和40年代、1960年代後半から70年代ぐらいにかけて、横浜が伸びた時代につくったインフラがたくさんあります。これがいつ一斉に更新時期になるかはちょっと分からないところがまだありますけれども、それでも確実に来る。開発行為でつくったものについても、市で受けた時点で公共施設になり、今度は市で更新していかなければならない局面が増えてきて、これを着実にこなしていかなければならない一方で、予算も考えていかなければならない状況になります。
 本来はそれだから身軽にやりたいところなのですが、その次に63ページの表が出ますが、ずっと横浜市としても全国の指定都市、特に旧特別市プラスの旧五大市の中では、人口当たりの職員数は極めて低い水準で推移してきたのですが、結局これが平成28、29年ぐらいにがんと増えています。何で増えたかと言うと、先ほど見た県費負担教職員の移譲分になります。これは市としては人件費負担が高くなるのですけれども、先ほど言ったような市として一貫して教育をしていく、普通は学校管理者と給与負担者と人事権者が一体というのは民間企業では常識ですけれども、その常識なところをやっとこれでつくれたわけです。しかもここだけ費用を総合的に市の中で今後調整していくのをやるために、この部分の人件費負担は財源移譲もありましたけれども、これを抱えて業務をやっていくことに踏み出して、ここから正面に向き合った上で少子化対策をやっていかなければならない状況になってきているのです。
 こうした中で今までのまちづくりのよさを生かす一方、やっぱりより一層精査をしていくことがどうしても必要になってきていて、市分に関しては、例えば人件費についても結構厳しく見てきているのですが、65ページが神奈川県の行政機構、それから神奈川県の議会の部分と横浜市議会や横浜の行政機関における職員数を比較したものになります。何が問題かというと、単純にまず比較できないのです。だから結構神奈川県のほうに職員がいます。しかし、この職員が厳密に横浜市分にどのぐらい貢献しているかが分からない、要するに見える化に逆行しているのです。そうした中でもう一度、この職員数から見ると、この次またグラフを見ますが、市の部分に貢献しているものが僅かな割には、結構職員がいるというイメージがあって、これをだからいつまでもこのままでやっていけるのかなと問われているのではないかということなのです。
 そうした中で、ではどうしていくかと。これは今の制度がこうなっているので、これをゼロからがらがらぽんして、いや、それは都道府県の大きさがこれだけ違うのは分かっているし、基礎自治体の横浜市がもう都道府県の10位ぐらいの水準になってきているのは分かっているけれども、そんなこと言ったって始まらないという常識がある一方で、これをしかし現実的に少しでもプラスにどうやったら変えていけるかを考えますと、まず制度として、今の指定都市がある。それから同時に東京都と同じ制度を指定都市のところ、大都市にも応用できる特別区設置制度、いわゆる都構想という制度はあるのです。
 これに対して、昔は特別市の制度があったのですけれども、これを特別自治市として、つまり特別区政との逆のもの、これをまず制度として新たにつくるという側面もありますけれども、復活させるという側面もあるのですが、これをやっぱり制度として選択可能ラインにしていくと。つまり一元的な地方自治をDX時代にずっと反映されなくなってきている。直接市民の声を行政に伝えやすくしていく仕組みをまず制度として創設すべきではないかと、今努力をさらにしていくべきではないかと。全ての指定都市がそう選択するかどうか分かりませんけれども、やっぱり選択の可能性はつくると。選択の可能性をつくった上で、それぞれの指定都市がその自分たちの状況に応じて特別自治市の制度も選択できるような体制をつくるべきではないかというのが主張の一つになります。これはこの制度が実現する大都市制度ということで、既に横浜市は特別自治大綱ということでまとめておりますが、基本的には県の部分を含めて横浜市が一元的に業務を担うことになります。
 では、業務を担うことでどのぐらい変わっていくのかということですが、実はこれ、小・中学校等の設置状況について見たのが70ページになります。小学校と中学校についてはもうそうですし、つまり高校が残っているのですね。市立高校もありますけれども、やっぱり県立高校あります。ここが教育委員会のところで結構大きくなっていまして、その他で言うと、公園はごく僅かになっています。それから図書館なんかもごく僅か、比較的ロットが大きいのは公営住宅ですかね、これが残っているという形になっていまして、ただ、今後も人口減少になってきて、民間住宅と含めて公営住宅をどうやって全体的に整備していくかという観点からすると、公共部門については一元的にやっていったほうが合理的なのかもしれません。こういうところも含めていくと、ここら辺のところが残っていますけれども、全体で言うと青が非常に多いので、十分に現実的にやっていける話ではないかと思います。
 財政力は先ほど見たように、もともと県全体で愛知県に次ぐ財政力の高さになっていますし、もともと特別自治市で横浜市が独立すると、県内の税源をより独り占めするのではないかと言われることもありますが、残念ながら、72ページのグラフを見たら分かりますとおり、大体人口構成比と同じぐらいの県税構成比、昔はもうちょっといっぱい税金があったのですけれども、最近は大体人口の構成比と同じぐらいの県税構成比しかないので、そういう意味では、著しく横浜が独り勝ちするという状況にはなっていないこともここから確認することができるのではないかと思います。
 以上を考えてみますと、こうするとやっぱり行政の流通革命、DX時代になってくると、特別自治市をつくるプラットフォーム改革が喫緊の課題として出てくる。無駄をなくす、それから改善を促進する、しかし制度変更は最小にして、よき自治をつないでいくということを備えた、この改革をやっていくべきではないかと思います。
 では、この制度をどうやってつくっていくかということで、今はまずこの一般制度をつくっていくこと、これ、幾ら支障がないといっても、今の都道府県とは違う制度をつくることになるので、ここの部分はやっぱり皆さんにも随分頑張っていただかないと困ると思うのですが、その過程の中でこの制度をつくっていくときに、県との合意をどうやって進めていくかが結構重要になります。
 先ほども言いましたように、市民レベルとか市町村レベルだと、そんなに迷惑がかかることもないし、どちらかというとプラスで、私は例えで言うのですが、高校野球で甲子園の代表が横浜だけ別に出るという感じなのですよ。それは横浜の高校野球の球児にとっては可能性がより確実になりますけれども、残される神奈川県も横浜以外から必ず1校出るわけですから、割と市町村にとってはそんなに悪い制度ではないのですよ、しかも横浜の代表と戦わなくていいのですから。ですから、割とないのですが、ただ、県とどうやっていくかということが課題になっていて、県やそれから県議会議員の皆さんとどうやって理解していくかということがある中で、今の出されている方向だと、やっぱり申請は都道府県と指定都市の共同申請という形を取らざるを得ないのではないかという方向で検討をしています。
 しかし、絶対ノーの神奈川県がこれで本当に進むのかというお話になりますが、これは大阪都構想の制度設計もそうなのですが、行政内部のいろんな事務手続を詰めていくことになりますと、やっぱり知事なり市長なりが、県議会の同意と市議会の同意を併せてやっていくという意思決定がない限り進みません。神奈川県は指定都市を含めると3分の2ぐらいが指定都市選出になりますので、実は県議会でも多数をつくるのは多分そんなに難しいことではないのですよ、そのときにどういう形にするかというのはありますけれども。ただ、この共同申請という形で少なくとも今考えたのは、市議会とそれから道府県議会の同意、議決は必要になるという制度設計にはならざるを得ない形になります。
 それから、もう一つ制度的に考えたときに今問題といいますか、詰めが残っているのは、区の役割になります。先ほどもありましたが、何らか県がなくなるわけですから、それに代わって民主主義を充実させるということになると、住民代表機能を持つ区が必要だという考えになっていて、しかし費用対効果も考えると、法人格を有する特別区ではなくて、やっぱり今の行政区、市の内部組織としての区としていく。しかし、少なくとも今よりも区長の位置づけは強化しなければならないと。
 ただ、事務所掌をどうするかとなりますと、先ほど見たようにDX時代で区と本庁の役割が変わってきていますので、これを変に固定するものはつくれない。ただ、区の中の民主的な代表機能は強化していく必要があって、これを区長の特別職化等も含めてどうするか。区行政に対する議会の意思決定機能をどうやって監視機能を強化していくか、このことが課題になっていることになります。
 それから、もう一つ残る大きな業務の中に警察業務というのがあります。ただ、警察は一番犯罪捜査の情報ということもありますのでなかなか分からないところがあって、これはまず今のまま一部事務組合や事務の委託等を受けて、そのまま移管した中で少しずつ今後の警察と市政の在り方を変えていく形でもいいのではないかというのが、今の検討されている一つの方向になっています。これをどう考えていくべきなのかというのが課題として残っていることになります。
 最後に、これらのことを考えますと、大都市の常識だったかもしれませんが、見逃してきた積年の無駄だとか不公正、これはやっぱり超高齢化が進む中でもう許さないと、これが第一に言わなければならないこと。
 2番目に、誤解を招きやすいプラットフォーム改革、いや、もうそんなこと後回しで、まずコロナだよと、それはそうなのです。まず子育てだよと、それもそうなのです。だけれども、これを後回しにしていくと、調整が常に残り続けるのです。やっぱり外に向かって発展していくために、プラットフォーム自体をしっかり変えていくこともしなければならないというのが2番目。
 それから、この改革はなるべく市民の声を一元的につなげていくと、見える化してストレートにつなげていくスマートな変革なのです。これをまず特別自治市として大都市の部分から始めて、その効果を全国に広めていくということが必要で、2層3段階に及ぶ自治制度を1層2段階に時間をかけて変えていくようなものの先鞭として、横浜市が先駆的に取り組むという決意が必要なのではないかと思います。
 以上、それも踏まえて、総務省と今、研究会もしていますし、それから指定都市市長会で多様な大都市制度実現プロジェクトということで運営しています。これが総務省のほうでやっている自治総合センターでつけてやっている大都市の研究会になります。こういうのも検討していますが、やっぱり一番重要なのは皆さんのほうからの強い要望、要求でありまして、市民負担は少ないのですけれども、改革としては大きい改革になります。ぜひ指定都市のほうからよい知恵と推進力をいただけたらと思っております。
 すみません、長くなりましたが、私の話とさせていただきます。どうもありがとうございました。

○横山[勇]委員長
 辻先生、どうもありがとうございました。
 講演が終わりましたので、質疑に入ります。


 (中略)

◆荻原委員
 先生、大変ありがとうございました。
 今、お話が触れられたところでございますけれども、75ページの住民代表機能を持つ区に関する部分で、2点お伺いさせていただきたいと思いますが、まず区長の位置づけの強化で、地方分権の意味合い、それはいわゆる団体自治の拡充という部分でも、区に権限をどんどん与えていくという意味で、区長の位置づけの強化が大事だという観点なのだろうと思うのですけれども、まずどのような点で区長の位置づけの強化を具体的にどうイメージをできるかという点を1つ。
 もう一つが、一番最後のポツのところですけれども、区の行政に対する議会の意思決定機能、チェック機能の強化、民主的機能の部分だと思うのですが、こちらはいわゆる住民自治の拡充の部分に当たろうかと思うのですけれども、これも我々市会議員がどのように関与していくことが、例えば想定で結構ですけれども、先生のイメージされておられるものがあったら、教えていただきたいところでございます。

◎辻参考人
 2つとも非常に重要なことで、むしろ皆さんにいろいろお知恵をいただかないと無理なところかもしれません。
 他国のことを言うと、欧州の大都市は特別自治市、いわゆる都市州みたいになっているようなところがあって、今でももう既に制度化されているところはあるのです。そういうところは昔の伝統から、だから日本で言うと特別市制度がそのまま昔から継承されているところがあって、そういうところは大体市議会とは別に区議会があって、区議会の中でボランティアに近いような、かなり報酬も限定された人たちが選挙で選ばれて、場合によってはその人たちが互選で区長になったりというシステムをつくっているのが1つのイメージであります。
 それから、かつて特別市の制度が日本であったときに、では日本ではどういう制度になっていたかというと、区長だけ公選になっていました。要するに法人格はないのだけれども、区長だけは選挙で選ぶと。もともとはそういう規定はなかったのですけれども、最後、国会で申請されてそういう制度が入っているという経緯があります。
 これらを考えたとき、では今に照らしてどうかというと、欧州の議会の制度は要するにボランティアのような形で今の専門的な市政についていろいろやるというのはちょっと現実的に難しくなってきているのですよね。そうして考えてみると、市議会とは別に区議会議員を選ぶというのは費用もかかりますし、費用対効果も低いので、基本的にはやっぱり市議会の人と区の議員をする人は専門的にそれをやる人で、なおかつ別々に選ぶのではなくて、同一の人のほうが現実的ではないかと思います。
 では、選挙をやることがいいのかと考えると、法人格が別の東京都の特別区のような制度をつくると、やっぱり法人格も違うから区議会議員も別で区長も別というのはあり得ると思います。ただ、やっぱりお金がかかるのですね。横浜は23区に比べて住みよいという原点もありますけれども、その住みよい中にはやっぱり東京ほど高い価格を払わずとも快適な住環境があると。その中で費用対効果のよいまちでやっていけるところが特徴だとすると、やたら立派なものをたくさんつくるのと同じような費用がかかる制度をつくっても、多分なかなか支持されないことを考えると、やっぱり法人格を持たないことを前提に、公選で区長を選ぶというのはなかなか難しい感じがします。
 そうして考えてみると、現実的な路線としては区長を特別職にして、市議会全体の同意を得た上で任命することと、その区長に選ばれる人の属性に関して、事実上、慣習上もその対象になる人を増やしていくような工夫をするということをしたり、今の特別職にするという形で、その任用の在り方も考えるという中でやるのが、今までの実践の中での経験と、特別自治市の体制強化の中であり得る回答なのかなという感じはしています。
 ただ、結局県議会もなくしますので、今の指定都市制度のままで特別自治市になることが許されるかというと、それは民主主義の後退につながるかもしれないというのは、前々回の地方制度調査会のときも言われたことなので、やっぱり今よりも制度的にしっかりと担保するところ、議会の関与を強くするところを制度的にしっかり担保することは必要ではないかと思います。
 そのときにこの話とセットになるのが、今のことに対してどうやって意思決定機能を強化したり、チェック機能を強化するのかという話になったときに、これは区づくりのときでも横浜の場合は実践の例もありますけれども、やっぱり委員会をつくってちゃんと議論をするという形になっています。最終的にこれを協議だけではなくて議決もするような機関にしていくことになるのではないかと思うのです。
 そのときに、では委員会の人数の話とかになったときに、どういう工夫ができるかということを考えていかなければならないと思うのですが、現実問題ではやっぱり区ごとに委員会をつくって、その中で協議だけではなくて議決もしていくような形にして、区長は公選ではないけれども、やっぱり特別職の人を議会の同意をもって任命していく形ぐらいまでは整えて、しっかり民主的にはチェックしますという形をつくるのが現実かなという気はしています。
 しかしこれ、私たちはどちらかというと行政のシステムをどうするかというところを議論していますので、本格的に議会の機能の在り方についてはまだまだ議論が足りないところがありまして、ぜひそれは当事者である皆さんによい知恵を出していただいて、どうしたら結局実質的にチェック機能が強まる、市民のかゆいところに手の届く行政を担保できるのかというところは知恵を出していただきたいなと思っております。