横浜市議会議員 おぎわら隆宏

 

市政報告/議事録

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令和 4年 市会運営委員会

△議題1 地方分権時代における議会活動の活性化

(前略)

◆荻原委員
 ありがとうございます。18ページなのですが、議員提案条例の4つの枠があって、一番最後の特定の行政分野に関する条例のところで、実効性の担保、これがなかなか課題ではないかという御指摘を、御意見いただいたと思います。
 まさにそのとおりだなあと思うところがございまして、この点について、日本の地方議会は、予算編成権を持っていないという意味で、立法といいますか、立例することができる議会であって、提案権はあるわけですけれども、予算編成権がないことで、実際の特定の行政分野に関する、ちゃんとできているかどうかということの実効性について、チェックすることが少し難しくなっているのかなと。
 もし予算編成権を議会が伴えば、ちゃんと実効性を担保する予算も編成をして、そのことをまた市民に選挙で、この政策でよかったのかどうかということの責任を問うこともできるのかなと思ったりするのですけれども、この点、予算編成権について、日本の地方議会には付与されていないという、二元代表制は大統領制と非常に酷似していると思うのですけれども、アメリカの連邦議会の場合は、予算編成権も議案提案権も両方とも持っている。
 大統領にはそれがないという、こういう仕組みだと思うのですけれども、日本の場合は、首長に予算編成権も議案提案権も与えられている中で、この実効性についてはなかなか議会がそこを持つことができていないという印象を持ったのですけれども、その点の先生のお考えを伺いたいと思います。

◎出石参考人
 そうですね。議会が予算編成権を持つべきだということについて、そこまで考えたことが実はありませんで、今の地方自治法の制度上でどうだろうかってまず考えたときには、今、何条か忘れちゃいましたが、予算が保障されていない条例というのは本来提案できないことになっているのですが、これというのは厳格に言うと、厳格にって変ですけれども、当たり前ですが、通常、市長提案でも、第1回定例会に条例と予算が出るケースが多いですから、そのときに予算通っていないのに、あるいは議会が予算通さないのに、予算に関わる条例は出せないじゃないかって、それ、実はその論はちょっと違っていて、基本的には、お金は絶対かかるじゃないですか、新しい事務を発生する条例であれば。
 そこは必ずかかってくるんだけれども、そこはちょっと話がごちゃごちゃになってしまいましたが、ある程度、予算は、長が提案して議会が議決するという前提の下で、ある程度政策条例は首長が出せるのですよね。
 ある程度というか基本的には出せるのですね。裏返して見れば、議員提案で、政策を進めるための条例を、予算をある意味、裏打ちするような、よくあるのは予算の範囲内で補助することができるとか、そういう規定はよく条例に置くわけですね。それは最終的にはそうやって書かないと、予算議決されなければいけないからということあるんだけれども、でも、そういう工夫をすることによって、予算編成権を持っていない議会が議員提案をするときにある程度、もちろん先ほどありましたが、ある程度事前調整は必要ですよ、絶対必要なのですが、執行部とある程度調整をした上で、議員提案条例の中に予算がある程度裏打ちされるような条例のつくり方というのは、私はあると思うのですね。
 あるというか、それが基本だと思うのですね。その中で対応していくというのが現実的な話ですよね。それで、今、委員がありましたように、本来、議会が予算編成権を持てば、そこがある意味、さらに議会の条例制定にもつながっていくというのはよく分かるところですので、今の段階で、私も少し、今後研究してみたいと思います。すみません、お答えになっていなくて。

◆荻原委員
 いいえ、とんでもないです。ありがとうございます。非常によく分かりました。そして、お話の中でありました、3ページだったと思うのですが、住民自治ですね。団体自治と住民自治と、日本の地方自治の概念には2つある。
 これで構成されているというところで、これも私、長年、不思議に思っていたところなのですけれども、どうして2つに分かれているのかなというところがございまして、いわゆる団体自治で、先生が整理していただいた、この団体自治は対外的な自立を示して、住民自治は対内的な自立を示すということで御説明いただいたのですけれども、そもそも住民自治の中に、いわゆる団体自治の概念も含まれることはできないのかなということを考えたりもするのですけれども、そもそもなぜこの日本の自治という考えが、団体自治と住民自治に分かれているんだろうかという点は、いかがでしょうか。

◎出石参考人
 まずおっしゃられたその団体自治が住民自治に含まれているのではないかというのは、実際そのとおりだと思うのですね。というのは、例えば条例制定権というのは、団体自治ですよね。
 でも一方で、提案するのは首長、市長か議員ですよね。そして議決するのは議会ですよね。これは住民自治なのですね。
 なので、これは2つに切り分けているけれども、実際には、団体自治権があるからこそ、住民自治がある。あるいは住民自治を担うのが独立した団体なんだということになるので、必ずしも別個の概念ではないのですよね。
 それから、なぜこのような形で、今、いわゆる地方自治の本旨ということが憲法上も位置づけられたかというと、これは単純に、ある意味、戦前戦中の反省からなのですね。
 権限を集中させない。だから、最近地方分権と言いますが、権限分散なのですね。広く言えば、例えば、警察権や教育などを地方に委ねたのも、権限を国に集中させないということだし、一方で、自治体においても、首長に権限を集中させない。なので住民代表を議会というところと首長に分けた。それによって、住民がコントロールするというところなのですよね。
 日本のこういう制度って実は、なかなか他国にないのですよね。例えば、リコール制度だとか、ああいう制度が今も神奈川県内の自治体でうごめいているところがありますけれども、不信任、そして議会の解散、あるいは失職という制度とか、外国にないのですよね。日本独特の制度で、やはりある意味、戦前戦中のああいう戦争にいってしまった反省に基づいた民主主義のルールとして編み出されたものということなんだと思います。

◆荻原委員
 ありがとうございます。最後に1点なんでございますけれども、5ページのところで御説明いただいたことに関連してくるのですけれども、今、日本は、国は議院内閣制で、地方は二元代表制ということになっておりますけれども、様々な議員提案の条例を制定していくということに当たって、我々は地方選挙で、議員の選挙で、市民の皆さんに、私たちはこういう条例をつくりますということを公約として掲げて選挙をしていただくという場合に、議院内閣制のように、そのときの議員選挙で、より多くの同じ考えで、1つの政党なり会派なりグループなり、この条例をつくりますというグループに、議会の過半数を取ってもらって、その条例を成立させていただくという、こういう、要するに議会の選挙で公約を市民に見ていただいて、それを実現する。こういう議院内閣制の手法というのは、特に横浜市は、ある意味、政党性が非常に大きく今、展開されている議会でもありますけれども、そういった形でも、より議員提案の条例をつくっていくということを、より活性化していくことになるのではないか。つまり議院内閣制の制度の下での議会選挙をすることで、議員提案の条例というものを増やしていく。
 さらには、先ほどの予算編成権の話も、内閣制にすることで、予算編成権も議会に付与されるということも考えられるのではないかなと、私は常々思っているのですけれども、その点の先生の御見解を教えていただければありがたいと思います。

◎出石参考人
 地方制度調査会でも過去に、過去にってそんな前ではないですが、10年以内ぐらい前だと思いますが、シティーマネジャー制が1つの項目として提案されたことがあるのですね。
 つまり議会の中から執行者、市長に位置づけられる形を出すという案も出ているのですね。結果的には、それは実現していませんが、やはり検討の中ではそれは出ていることだと思いますので、十分あり得ることだと思うのです。
 ただ一方で、私自身は、もう戦後これだけたってきていて、地方自治制度、私は割とこれ、機能していると思っているほうなのですね。議会と長と二元代表制という意味で。
 ただ、確かに、幾つか自治体で最近でもそこが対立構造にあるところがあったりしますけれども、対立はあっていいわけですから、対立はあって、もちろんよくて、ただ、住民のためにここまでなってしまうと、自治がもう崩壊しているぞというところもありますが、それは問題なのですが、一方でシティーマネジャー制的なこと、今おっしゃられたような、議会の中で、要するに与野党を決めるということですよね。
 簡単に言えば。それはあり得ると思いますが、繰り返しになっちゃうんだけれども、市長がいて、市長がいてさらに議会の中でそういう形をやるとなると、また今度市長と今度完全に議会が、今は建前かもしれませんが、仮に対立的なモードにあったとしても、要は、それぞれしっかりと議論をして通すなら通すじゃないですか。それがどうなっちゃうのかなというちょっと心配はありますね。
 市長がいて、一方でシティーマネジャーみたいな人がもし別にいたとしたら。これが完全に、アメリカはそうなのですけれども、確かにそうなんだけれども、地方自治でできるかなというのは、それから横浜市のようにこれだけ成熟した大都市と、僅か千人とかの自治体なんかもあるわけですから、全部一律の制度ではないほうがいいというのもありますね。そういう議論もありますから、そのあたりでしょうか。

◆荻原委員
 示唆に富むお話をいただきまして、感謝を申し上げます。そうですね。今、憲法で定められている中で、長と議会、それぞれ直接選挙する。
 地方自治法で、それぞれの権限が定まっておりますので、地方自治法を改正したりとか、様々な形で地方の政治の在り方の多様性が増えていくということがあったらいいなと思いましたので、その観点から質問いたしましたので、今日は本当にありがとうございます。