横浜市議会議員 おぎわら隆宏

 

市政報告/議事録

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令和6年第3回定例会

△いじめ自殺事案に関する教育長の処分と総合教育会議の未開催について

○議長(鈴木太郎君)
これより討論に入ります。
発言の通告がありますので、順次これを許します。荻原隆宏君。

◆(荻原隆宏君)
横浜の風、荻原隆宏です。
迷惑をかけてしまった皆さん、本当にごめんなさい。なぜ死んだかというと、いじめがつらかったからです。世の中の人たちにはいじめと判断してもらえないようなものだと思います。それでも私にはつらかった。娘はこう書き残して短い人生を終えてしまいました。第三者委員会の調査が終わった後の遺族のコメントはこの文章から始まります。なぜ死んだかというととの読み手に対して既に自分の命が終わった過去形で遺書をしたためる中学二年生の女子生徒の心中を察すると言葉もありません。世の中の人たちにはいじめと判断してもらえないようなものだと思います、それでも私にはつらかったとの世の中と自分との断絶の深い苦しみに胸をえぐられます。横浜市は彼女のこの苦悩にどこまで応えることができているのでしょうか。
2011年、大津市でのいじめ自殺事案が大きく報じられた際、当時の越直美市長は市長直轄の第三者調査委員会をつくり、教育委員会によって隠蔽されていたいじめの事実を暴きました。そして13年後の横浜市でやはり教育委員会によっていじめが隠蔽されていたことが第三者委員会によって本年3月に明らかとなり、今年度に入ってさらに再調査が行われ、その調査に当たった弁護士の意見書には、教育長と教育次長は自殺の原因としていじめの存在を遺族が指摘していたことの説明を受けていたことが述べられています。大津市の事案を発端にいじめ防止対策推進法がつくられ、また、地方教育行政の組織及び運営に関する法律には総合教育会議の設置条項が加わり、いじめにより児童生徒が自殺する事案が発生した場合などに市長が教育委員会と協議できる場がこのとき生まれたわけです。
しかし、2020年3月のいじめ自殺事案の発生からこれまで、この事案に関して本市において総合教育会議が開かれることはありませんでした。総合審査において市長に確認したところ、恐らく市長は今年度の再調査を念頭に置いておられたのかと思いますが、迅速に調査を行う必要があったとの旨の御答弁でございましたけれども、私は、2020年10月に本件に関していじめ重大事態調査に移行してからもなお総合教育会議が開かれなかったのはなぜかと疑問に思い質問をした次第です。時間は十分過ぎるほどありました。この事案に関して総合教育会議を開かない理由はどこにも見当たらないと思います。
本年8月23日に市長は、鯉渕信也前教育長に文書を手交する形式で処分を行いました。その内容は、いじめ自殺事案に関しては組織マネジメントが不十分であったことから文書訓戒に相当する行為として厳重に注意するとの注意をし、一方、本市教員によるわいせつ事案の公判の傍聴妨害に関しては公開裁判の原則の趣旨に反するとともに地方教育行政の組織及び運営に関する法律に違反する行為であったとして減給3か月、月額10分の1に相当する行為であったと懲戒処分に相当するとのものでした。いじめ自殺事案に対しては懲戒よりも軽い人事的措置の文書訓戒にとどまっていますが、人事的措置というのは、特に法律にも条例にもその他規則などにもどこにも明文化された定めはありません。社会的制裁性のない市長や局区長による注意という意味合いのものです。
いじめ自殺事案に関する教育長の責任がいわば市内部の人事組織における注意をするだけで終わってよいものなのか私は疑問に思います。そして、減給3か月、月額10分の1とは総額28万2000円です。既に教育長は退職しておられますし、そもそも特別職である教育長には懲戒処分は存在せず法的には効力は発生しませんので、この28万2000円については教育長は8月26日に自主返納をされました。一方で教育長が4月30日に受け取られた退職手当、つまり退職金は満額の409万4640円です。28万2000円の自主返納は鯉渕前教育長にとっていかほどの重さのものであったのでしょうか。
鯉渕前教育長が傍聴妨害に関して28万2000円の自主返納をしたのであれば、いじめ自殺事案に関して免職や停職の懲戒処分に相当するとしていれば満額でない退職金を示し、場合によっては全額自主返納にも至れたのではないでしょうか。あるいは減給の懲戒処分相当としていれば同様に給与の自主返納もあり得たでしょう。またあるいは、本年3月の退職前にしっかりと懲戒処分を措置していれば、この退職金の支出は全額支給しないという選択も本市はできたわけです。私は、いじめ自殺事案が何の法令にも定めのない人事的措置の文書訓戒の注意で終わっていることが、この女子生徒の命の重さに比してあまりにも軽く捉えられているのではないかと内心信じられない思いを抱きますとともに、今後の教育委員会及び市の判断にももろもろに信頼が置けない思いでおります。
教育委員会がいじめ防止対策法にのっとった対策を講じなかったことに加え、再調査の意見書には遺族によるいじめの存在の指摘についての報告を教育長は受けていたことが明記されているのであり、そのことは教育長が長として判断すべきを判断しなかったことを意味しています。それにもかかわらず、部下である人権健康教育部長や学校教育事務所長や学校長、課長、室長には懲戒処分としながら、その上司である教育長が部下よりも軽い注意との処分で終わることは教育長の職位の責任の重さを滅却させるような判断であり、生徒の命を失った事案に対する教育長の処分としてはあまりに軽く、あまりに甘い処分と言わざるを得ません。
また、市長が招集しなかった総合教育会議は、その招集を教育長が市長に求めることもできますが、これも求めたことはないとの総合審査での現教育長の御答弁がありました。私は、いじめ自殺事案はこれ以上なく重大な事案でありますから、総合教育会議はしっかり招集して市長部局と教育委員会との協議を行ってそれを市民に公開し、真実の共有と再発防止の議論と、亡くなった魂への鎮魂を全市的に社会全体で進めていくべきだったと思います。それが亡くなった生徒の願いでもあったのではないかと私は思います。
再発防止は全市を挙げて取り組むべきところです。そこはひたむきに対策を講じていくということであると思います。問題は今回教育長と市長がどのように対処すべきだったかについて見過ごしてはならないことを見過ごしてしまいそうなのではないか、大事なことを忘れているのではないかということであります。最良の再発防止を行うためにやるべきことがあったという事実にしっかり気づいた上で、なぜそれができなかったのか謙虚に検証することが欠かせないのではないでしょうか。
再調査を行った弁護士の意見書の市教育委員会などの対応の当否についての章の最後の部分を読みます。「教育長や教育次長への本事案の説明の過程において、遺族が当該生徒の自殺の原因としていじめの存在を指摘していたことの説明も含まれていたこと等に照らすと、所管部署に対し、本事案が重大事態に該当しないのか否かについて更に詳細な検討を指示することもなく、所管部署に対し、引き続き適切に対応するようにとの趣旨の対応にとどまったことは、本事案の内容に照らすと、教育長、教育次長という市教委の最上位の監督者の対応として疑問が残ると言わざるを得ない。」。このように述べられています。
そして締めくくりの総括及び提言の章において「教育長及び教育次長がこれほど重要な判断に実質的に関わって指導力を発揮できなかったことは遺憾と言わざるを得ない。」。このようにあります。本市はこの言葉をこそ重く受け止め、教育長に対しいま一度処分を再考するべきではないでしょうか。教育委員会においては様々な改革、チェック機構の創設などが必要なのは言うまでもありません。しかし、そもそも教育長の指導力が発揮されるべきときに発揮されなかったことは、それはシステムの問題なのでしょうか。
総合審査の前に教育委員会にどうしてこのような処分になったのかと問うたときに、教育長は報告を聞く存在であり、いじめの文言を実際に消した行為者に問題の焦点を当てたのだと、このようにお答えがありました。しかし、報告を聞くだけの教育長とは、それが市民から期待される教育長の在り方とは私は到底思えません。学校現場が児童生徒の苦しみをキャッチしたとしても、教育委員会の内部で削除され、しかも横浜市は教育現場へのルールのほうが厳格であり、教育委員会の長はただ報告を聞くだけの存在として、教育長も聞く存在でよしと自ら甘んじたところに横浜市教育委員会の過ちの全てが表出しているのではないかと私は思っております。
以上、いじめ自殺事案に関して、懲戒処分にも届かず、まるで何事もなかったかのように鯉渕前教育長に給与が支払われ、再調査を待たず退職手当も支給されたという事実は認定するに妥当性を見いだし得ませんので、令和5年度一般会計決算のうち退職手当については総務局、給与については教育委員会の決算につき不認定にすべきものと判断し、したがいまして、令和5年度一般会計決算につき一体として不認定といたします。
議員の皆様の御賛同を賜りますよう心よりお願い申し上げまして、討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。